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血管新生・慢性炎症とは
血管新生
既存の血管から新たに血管が形成される過程を指し、血管新生促進因子と抑制因子のバランスによって厳密に制御されています。本来、健常な成人であれば血管が新生する必要はありません。血管新生異常の典型例として、悪性腫瘍(ガン)が誘導する血管新生が挙げられます。ガンは、その爆発的な増殖を維持するために酸素と栄養素の補給を必要としており、腫瘤部の血管から新たな血管を誘導し、酸素と栄養素を確保します。
そもそも血管新生は、糖尿病性網膜症、アテローム性動脈硬化症などの病態悪化と深く関わっており、近年、血管新生抑制剤を用いたこれらの疾病の治療や予防が導入されていますが、ほとんどが合成されたもので副作用が懸念されるため、安全性の観点から問題視されています。
そこで、京都大学がフコキサンチンに強い血管新生抑制作用を有することを見出し、人体に安全かつ有効な血管新生抑制剤となることを解明しました。そのため、血管新生が関係する糖尿病や、アルツハイマー病、痴呆症、乾癬、加齢黄斑変性症などの疾病治療に大いに適用できるものであることを突きとめたのです。また、新生血管を通じる酸素供給からの活性酸素による酸化ストレスを抑制するため、リウマチ性関節炎の痛み抑制にも優位に働くことが期待されています。
慢性炎症
発ガンのメカニズムには、慢性的な炎症反応があります。その炎症に関わる因子として、プロスタグランジンE2(以下PG-E2)が考えられています。PG-E2は生理活性物質の一つであり、血液の循環をはじめ呼吸を安定的に保つ働きや、生体のシグナルとして発痛・発熱などを起こす作用などがあります。
このPG-E2が一時的に産生されれば良いのですが、発ガンの過程では過剰にそして慢性的に産生され、常に炎症が起こります。そこで、PG-E2を作らせないようにすれば良いと考えられたのです。
ここで問題となるのがシクロオキシゲナーゼ(COX)であり、これがPG-E2の合成を触媒しているのです。COXには2種類あり、COX-1は身体を安定に保つ量だけ産生され、COX-2は炎症時に過剰に産出されます。ということは、過剰にそして慢性炎症を生じさせる犯人はCOX-2ということになります。COX-2はアラキドン酸を基質としてPG-E2などを生成することで炎症反応を促進し、慢性化すると生体内で抗原提示細胞(マクロファージ)などの機序を狂わせ、炎症物質(PG-E2)を絶えず放出させて炎症反応の沈静化を妨げて悪循環に陥らせます。これが慢性炎症疾患と呼ばれるものであり、発ガンや血管新生にも関与しているのです。